昨日の滞在記に「名古屋で軽く食事をして東京へ」とさりげなく書いたそのときの話。
以前、名古屋に行ったことのある方ならわかるかもしれないが、駅前に風格のある「大名古屋ビルヂング」があった。昭和30年代に建てられたビルで、「ザ・昭和」という感じがした。
大阪での飲み会の記述をお読みになった方は気づいているだろうが、自分はこのような風格のある(ヘビーな)店が好きなのである。2005年愛知万博(愛・地球博)の業務をかつて担当していたので、名古屋への出張が多く、同僚で鉄ちゃんのKくんとここの店へよく行っていた。最終新幹線に間に合わないときは、深夜に停車する寝台急行「銀河」に乗り帰京したものだ。
東京で同僚に「名古屋のどの店で飲んだんですか?」と聞かれ、「なんという店だったかな、大名古屋ビルヂングに入っている店なんだけど」と言うと、「ビルヂングって…大正時代じゃないんですから」と驚かれたのである。「いや、ビルヂングという表記の通りに読んでいるんだから」と反論したのだが、「はいはい」といなされ、あまり信用していないようだった。
2015年に大名古屋ビルヂングが建て替えられたことは知っていたのだが、なかなか行けないでいた。いつか行きたいと思っていたのだが、この日とうとう行けたのである。
改札を出て、駅員に、念のため、場所を確認しようとして、「大名古屋ビルヂングはどっちでしたか?」と聞こうとしたのだが、若い駅員で「ビルヂングって、ププッ」と内心笑われないかとひるんでしまい、「大名古屋ビルは」と略称で聞いてしまった。
表記通りに、読むのが正しいのは当然なのだが、故郷での体験を思い出した。帯広には、インデアンカレーというカレーのチェーン店があり、市民に親しまれている。表記の通り読めばいいのだが、周囲の学生の多くは「インディアンカレー」と発音していた。たまに年配の方が(うちの親もそうだったが)「インデアンカレー」と発音していると「インデアンって!」と内心おもしろがっていたのであった。ただし、自分も今は表記通り読むべきだと思い、「インデアンカレー」と発音している。*1
この経験から、地元の若い層は、「ビルヂング」という発音に違和感を持って、「大名古屋ビルディング」と発音しているのではないかと勘繰ったのである。ちなみに三菱地所は、戦後も「ビルヂング」の名称を維持し、かつては千代田区丸の内二丁目に保有していたビルを「丸の内ビルヂング」と呼んでいたが、2002年(平成14年)に建て替えたときに「丸の内ビルディング」と改称(?)した。*2
地下の地図を見て地上に上がったが、「大名古屋ビルヂング」らしきものはない。デパートが燦然と輝くのが目に入る。右に左に視線を向けるが、それらしきビルはなし。地上の地図を見つけ再度確認すると、ここが「大名古屋ビルヂング」なのであった。1階がモダンなデパートになっているとは思わなかった。名古屋駅前の一等地を有効に活用すべき、という考えから建て替えられたのだから、これが正しい姿なのであろう。ただ、自分の知っているビルではもはやなかった。客層も若いカップル等の割合が大幅に増え、にぎわっていた。以前から入っている店もあったのかもしれないが、近くにあったご当地の店に入り、軽く飲むことにしたのであった。飲みながら、さっきの駅員には、堂々と「大名古屋ビルヂング」と発音して聞けばよかったと少し後悔。
*1 大阪にもインデアンカレーがあるが、こちらが元祖。帯広インデアンカレーの店内の説明文に、大阪で食べたインデアンカレーのおいしさに刺激を受けてカレーを開発した旨が記載されている。一口目の味わいがとても似ているが、大阪のインデアンカレーは辛さが追いかけてくるのに対し、帯広インデアンはそれほど辛さを感じさせることはなくファミリー層に支持されている。帯広を離れてから、札幌でも東京でもこの味わいから離れていたのだが、関西出張でインデアンカレーに出会い(再会し?)、それからよく食べている。最近、大阪から東京に店舗も出店し、ファンとしてはうれしい限り。
*2 名古屋では、「大名古屋ビルヂング」の名称を維持した。風格を感じさせる良い名前と思う。