2017年06月01日

フィルムコミッションと地域振興〜再び映画「ふるさと」と加藤嘉

 全国各地で、映画やテレビ番組のロケ地の誘致を意図して、フィルムコミッションの活動が盛んになっている。団体旅行が下火になって、観光客の減少が続く熱海は、この活動に力を入れている。近年、観光客が増えているようだ。
 市長との打ち合わせの中でも映画の誘致に関する話が話題になることが多い。
 5月5日の記述*1 で、ダムの底に沈んだ村を素材とした映画「ふるさと」を取り上げた。自分がその地を訪れたから、その話題をとりあげたのであり、映画「ふるさと」を知る人は現在ほとんどいないだろうし、これに再度触れる機会もまずないだろうと思っていたのである。
 ところが、なんと今日発売の『週刊文春』のコラム「春日太一の木曜邦画劇場」第242回に「ふるさと」が取り上げられている。このコラムは視点の当て方がユニークで、内容もおもしろいので、毎週必ず読むようにしている。春日氏も加藤嘉に焦点を当て、「砂の器」にも触れている。「『沈みゆく山村』『農夫』『伝三という役名』−これだけあれば、本作が名作であることはもう約束されたようなものだといえる。この設定の中に『加藤嘉』が置かれると想像するだけで、観る前から既に切ない感情が去来してきてしまうからだ」このような文章を読んでしまうと、目を見開いて「ええっ」と驚いたような加藤嘉の顔が、いやでも浮かんできてしまう。それだけのことに、なぜ感動してしまうのかな。日本が貧しかった時代の連綿とした思い、民族の深いDNAに根差したものか。そんなオーバーなと思う方も多いだろうが、他に理由づけができないのである。*2
 春日氏は、「連載を続けられたおかげで、素敵な作品に出合えた」と結んでいる。ハリウッドの大作もいいが、このような佳作にもっと目を向けたいものである。

*1 2017年05月05日「ゴールデンウイークの真ん中に」
*2 以前、戦後の貧しい時代を背景にしたNHKのドラマで、加藤嘉が主人公の娘の祖父を演じていた。娘が恋人を家に連れてくる。何も出すものがないので、恋人に祖父が大切に少しずつ飲んでいる焼酎を出す。(当時は物不足であり、市場に出回る焼酎は貴重で、お金を出してもなかなか買えなかった時代なのである)加藤嘉が示す"ええっ"と、驚いてショックを受けているような表情が可哀そうで仕方がなかったものだ。何気ないシーンなのだが、今も鮮明に覚えている。主人公の会話でさえ、ほとんど忘れているのに! 加藤嘉だと顔の表情だけで、とてつもない芝居になってしまう。
posted by 林 秀一 at 19:06| 日記 | 更新情報をチェックする