2018年02月22日

信託博物館で、思い出のドラマに再会

 旧知である東北某市の自治体職員の方が上京するとのことで、情報交換がてらランチをとることになった。彼が会議をしているという場所が当方の職場にも近いので、そこの喫茶で待ち合わせ。場所は東京駅すぐそばの丸の内。
 時間より少し前に着いたので、通り道にあったある博物館に入ることにした。業界誌に博物館をテーマにした文章を載せたことがある。そのため、道の博物館を見かけ、時間に余裕があれば、できる限り入館するようにしている。
 今日入ったのは、信託博物館。一等地に、かなり立派な建物であるのだが、入館は無料。自分は法学部卒なので、信託には少し知識がある。展示物の解説をざっと読みながら歩いたが、文学・映画・ドラマのコーナーがあり、特に興味を持った。シェークスピアの『ベニスの商人』の解説もあったが、自分が興味を持ったのは、ジェフリー・アーチャー原作『ケインとアベル』の解説文。これはイギリスでドラマ化もされており、自分はテレビ朝日で放送の際、夢中になって見た。30年以上前の放送だが、自分にとっては思い出のドラマ。注としてあらすじを示す*1 が、つい長くなってしまった。信託博物館の解説はわかりやすく、中学生でも楽しめるはず。懐かしのドラマを思い起こさせてくれて、感謝なのである。

*1 1906年ポーランドとアメリカで2人の男の子が同じ日に誕生する。それがケインとアベル。ケインは、銀行家の一族に生まれ、後に頭取となる。アベルは、貧しいポーランド移民の立場からホテル王にまで上り詰める。
ヴワデク(後のアベル)はポーランドで私生児として生まれるが、実は高貴な男爵の息子。男爵と共に第一次大戦でドイツ兵に捕えられる。男爵は死ぬ寸前に、彼が自分の子供であることを告げ、形見として腕輪を渡す。
 第一次大戦終結により、敗北したドイツ軍は撤退するが、ポーランドはロシアと戦争となり、捕虜となったアベルはシベリアへ送られる。脱走し、ロシア兵の目をかいくぐり、モスクワ行きの列車へともぐりこむ。空いている席へすわるが、前に座っている中年の婦人がいかがわしい相手と感じたのか、じろじろと見てくる。前を見ると、ロシア兵が現れ、乗客の身分証をチェックし始めている。もう立って逃げることはできない。アベルはあわてるがロシア兵はどんどん迫ってくる。ロシア兵がアベルに「身分証は?」と鋭く問いかける。
 もうこの辺はスリル最高潮で、「もう逃げられないよ! どうする?」と自分事のように、ドラマに没入している。すると、いかにも怪しげにアベルを見ていた婦人は、「私の弟よ、怪しいものではないわ」とロシア兵に言う。ロシア兵は「そうですか」と言い、去っていくのである。アベルは夫人に「どうして?」と問いかけると、「私の弟は、政治犯としてシベリアに送られているのよ」と答える。民衆を圧迫するロシア政府への反発心からアベルを助けたのである。
アベルは、ロシアからトルコへの脱出に成功し、オレンジを買おうとする。ポーランドの紙幣を渡すが、店主に受け取りを拒否される。空腹のあまり、オレンジを持って逃げ出すが、捕まって広場で腕を斬られそうになる。大きな刀で、腕が切られんとするときに、前で見物していた中年の男が、アベルがしていた腕輪を目にして、刑の執行人に「刑の執行を中止するんだ。拒否するとポーランド大使館から厳重な抗議がいくぞ」と忠告してくれる。腕を切られて、どうなるんだろう、気の毒で見ていられないと思ったときに発せられる見物人の忠告。この辺、驚きと感動、安堵の連続。
ポーランドの領事館に行き、帰国を願い出るが、領事館員は、「ポーランドは、戦争が終わり、昔と大きく変わった。君のような人を受け入れる社会はない。今後、発展が期待されるアメリカへ多くの人が向かっている。君もアメリカへ行ってはどうか」と勧める。その意見を聞いてアメリカへ向かう。その船上でポーランド名を捨て、アベルと名乗るのである。
 移民としてアメリカに上陸したアベルは、レストランのウエイターとなる。ここで、アベルの宿敵となるケインが登場。レストランに客として来る。ケインが座っているテーブルで、ポットから水を注ごうとするアベル。水をこぼして、服にかけてしまう。アベルは謝罪する。ケインは、富豪の息子として育ってきている。いかにもわがままそうでもあるし、めちゃくちゃ怒鳴られそう、レストランの上客のようでもあるので、最悪首になるかもしれない、とびくびく見ていると、「いや、これくらいなんでもない」とアベルに言い、向かいに座っている相手とそのまま話し続けるのである。見かけと違って、意外にもいい人だなとも思うが、貧しい移民のアベルに対しては全く関心を持たなかったと言った方が正しい。
 ここでドラマの前半が終了。まだ、半分。衝撃の連鎖は続く。ショッキングな場面になりそうで、見ることをやめようとした途端、救いの手が現れたり、さすが原作ジェフリー・アーチャーなのである。
 後半はケインとアベルが宿命のライバルとして渡り合う場面に突入するが、前半のあらすじだけで長くなったので、御関心の方は、新潮文庫のジェフリー・アーチャー『ケインとアベル』をお読みいただきたい。ドラマもぜひ見てほしいのだが、VHSテープは絶版で、英語版DVD(字幕なし)を見るしかない状態であるようだ。
posted by 林 秀一 at 22:45| 文化 | 更新情報をチェックする